国保はなぜ高い?個人事業主の負担が重くなる3つの理由
国保が高い主な理由は「会社負担がない」「扶養がない」「前年の所得で決まる」の3つです。
会社員と同じ所得でも、個人事業主のほうが保険料の負担は重くなりがち。
それぞれの理由を見ていきましょう。
【理由①】会社負担がなく、全額を自分で払う
会社員の健康保険は、保険料の半分を会社が負担しています。
一方、国保は全額が自己負担です。
国民年金も同じく全額自己負担なので、手取りから出ていく金額はどうしても大きくなります。
【理由②】扶養がなく、家族の人数分かかる
国保には「扶養」の考え方がありません。
加入者1人ごとに「均等割」がかかるため、家族が多いほど保険料が上がるしくみです。
会社員の健康保険なら、配偶者や子どもを扶養に入れても保険料は変わりませんよね。この差が、家族のいる個人事業主にとって大きな負担になっています。
【理由③】前年の所得で決まり、すぐには下がらない
国保の保険料は、前年の所得をもとに計算されます。
売上が落ちた年でも、前年に稼いでいれば保険料は高いままです。
さらに40〜64歳の人は、介護保険分が上乗せされます。40歳を境に「急に高くなった」と感じる人が多いのは、このためです。
2026年度(令和8年度)からは、新たに「子ども・子育て支援金分」も加わりました。
東京23区では所得割0.27%と、18歳以上1人あたりの均等割がかかります。
【早見表】所得別の国保と国民年金はいくら?
所得500万円・単身の場合、国保は年間約55万円(39歳以下)。国民年金とあわせると、毎月約6.4万円の負担です。
東京23区に住む単身の個人事業主を例に、2026年度(令和8年度)の料率で所得別の目安をまとめました。
| 所得 | 国保(年額) 39歳以下 | 国保(年額) 40〜64歳 | 国保+国民年金 (月額・39歳以下) |
|---|---|---|---|
| 200万円 | 約23.3万円 | 約28.9万円 | 約3.7万円 |
| 300万円 | 約33.9万円 | 約41.9万円 | 約4.6万円 |
| 400万円 | 約44.5万円 | 約54.9万円 | 約5.5万円 |
| 500万円 | 約55.1万円 | 約67.9万円 | 約6.4万円 |
| 600万円 | 約65.6万円 | 約81.0万円 | 約7.3万円 |
| 800万円 | 約86.8万円 | 約103.8万円 | 約9.0万円 |
| 1,000万円 | 約95.8万円 | 約112.8万円 | 約9.8万円 |
※東京都特別区の令和8年度料率(医療分・後期高齢者支援金分・介護分・子ども・子育て支援金分。中野区・江戸川区など一部の区は料率が異なります)、国民年金保険料は令和8年度の月額17,920円で試算。「所得」は売上から経費・青色申告特別控除を差し引いた金額です。実際の金額はお住まいの市区町村で異なります。
配偶者を国保に加入させている場合は、さらに1人分の均等割と国民年金が加わります。
たとえば所得500万円・配偶者ありなら、国保と国民年金で毎月約8.7万円です。
国保が高いときの対策7選
国保の対策は、「所得を正しく抑える」「制度を使う」「保険を変える」の順に検討するのがおすすめです。
手軽なものから順に紹介します。
【対策①】経費の計上漏れをなくす
国保の所得割は、確定申告の所得をもとに決まります。
事業に使った通信費・家賃の按分・交通費などが漏れていないか、見直してみましょう。
経費を正しく計上すれば、所得税・住民税とあわせて国保も下がります。
【対策②】青色申告特別控除を最大限使う
青色申告特別控除は、事業所得から直接差し引かれます。
そのため、国保の計算にも反映されるのがポイントです。
複式簿記で記帳し、e-Taxで申告(または優良な電子帳簿で保存)すれば、控除額は最大65万円。
紙で申告すると55万円、簡易簿記なら10万円にとどまります。
白色申告のままなら、青色申告への切り替えを検討してください。
【対策③】軽減制度の対象か確認する
世帯の所得が一定以下の場合、均等割・平等割が軽減されます。
確定申告をしていれば、多くの場合は自動で適用される制度です。
軽減の割合は、世帯の所得と人数に応じて7割・5割・2割の3段階。
所得が少ない年に「申告していない」と軽減が受けられないため、所得がゼロでも申告しておきましょう。
未就学児は、均等割が5割軽減されます。
18歳未満の子どもには、子ども・子育て支援金分の均等割もかかりません。
【対策④】減免制度を申請する
病気・災害・事業の休廃止などで所得が大きく減った場合、市区町村によっては保険料の減免を受けられます。
こちらは自動では適用されません。
該当しそうなら、お住まいの市区町村窓口に早めに相談してください。
【対策⑤】国保組合に加入する
業種によっては、同業者でつくる国民健康保険組合(国保組合)に入れます。
所得にかかわらず保険料が定額の組合もあり、所得が高い人ほど効果が大きい方法です。
ただし、加入できる業種・地域が限られる点に注意しましょう。年金は国民年金のままです。
【対策⑥】家族の加入先を見直す
配偶者が会社員なら、あなたや子どもが配偶者の健康保険の扶養に入れる可能性があります。
扶養に入れれば、その人の国保はかかりません。
扶養の条件は「国保に扶養はない?家族の保険料を減らす方法と扶養の条件」で詳しく解説しています。
【対策⑦】社会保険に切り替える
対策①〜⑥で下げられる金額には、限りがあります。
根本的に負担を変えたいなら、国保から社会保険(社保)に切り替えるのが最も効果的です。
社保なら保険料は給与額で決まり、家族を扶養に入れても保険料は増えません。
厚生年金に加入できるので、将来の年金も増えます。
フリーランス・個人事業主が社保に入る方法は、「フリーランスが社会保険(社保)に入る方法5選」でまとめました。
社会保険に切り替えると、いくら変わる?
所得が高い人や家族がいる人ほど、社保への切り替えで削減額が大きくなります。
個人のOSHIGOTOの実質負担は、月65,500円(39歳以下の目安)です。
早見表の金額と比べると、次のようになります。
| ケース(39歳以下) | 国保+国民年金 | 個人のOSHIGOTO | 差額(年間) |
|---|---|---|---|
| 所得500万円・単身 | 約6.4万円/月 | 6.55万円/月 | ほぼ変わらない |
| 所得500万円・配偶者あり | 約8.7万円/月 | 6.55万円/月 | 約26万円削減 |
| 所得800万円・配偶者あり | 約11.4万円/月 | 6.55万円/月 | 約58万円削減 |
※実質負担額は、ご利用料110,000円から給与の手取り44,500円を差し引いた目安です。40〜64歳は介護保険料が加わるため、実質負担額は上記より高くなります。
反対に、単身で所得が低めの人は、国保のままのほうが安いケースもあります。
無理な切り替えはおすすめしません。まずはシミュレーターで、あなたの条件で試算してみてください。
国保が高いときによくある質問
- 国保が高くて払えないときはどうすればいい?
- 滞納する前に、お住まいの市区町村の国保窓口に相談してください。分割納付や減免の相談ができます。滞納が続くと、延滞金や財産の差し押さえにつながるおそれがあります。
- iDeCoや小規模企業共済で国保は安くなる?
- 国保は安くなりません。所得税・住民税を下げる効果はあるので、節税策としては有効です。
- 国保の金額はいつ決まる?
- 前年の所得をもとに、毎年6月ごろ新しい年度の保険料が決まり、通知されます。東京23区では、6月に通知が届く区がほとんどです。
- 個人事業主でも社会保険に入れる?
- 入れます。会社に雇用される、法人を設立する、雇用型のサービスを利用するなどの方法があります。
まとめ:国保が高いなら、まず「自分に合う対策」を知ろう
- 国保が高いのは「全額自己負担」「扶養なし」「前年所得で決まる」から
- 経費・青色申告・軽減制度の見直しは、今日からできる対策
- iDeCo・小規模企業共済では国保は下がらない
- 所得が高い人・家族がいる人は、社会保険への切り替えが最も効果的
※本記事は一般的な制度の解説です。保険料の計算方法や料率は市区町村・年度によって異なります。個別の税務・社会保険に関する判断は、お住まいの市区町村窓口や税理士・社会保険労務士等の専門家にご確認ください。